LOST SONG × 森田と純平

テレビアニメ「LOST SONG」監督 森田と純平氏。鈴木このみ、田村ゆかりのW主演による幻奏叙事詩[ファンタジーオペラ]として話題の新作オリジナルアニメーション。今回の特集では、原作・脚本・監督を務める森田と純平氏にLOST SONGの魅力、制作現場について、作品への思い等お聞きしました。

― 森田と純平さんが監督を務めるLOST SONGでは、なぜファンタジーオペラを選んだのですか?

初期の段階で「壮大なイメージの作品に歌を盛り込んで欲しい」という意見がプロデューサーの方から上がってきたことがざっくりとした理由です。
歌を盛り込ませた作品は、グループアイドル作品など様々にありますが、自分はそういう分野はあまり得意ではないだろうし、なんか違うな、と。そこで、歌をそのままファンタジーな物語の中に入れるとどうなるかなと思いました。ただ主題歌、劇中歌で終わらせるのではなく、ストーリー自体に歌が密接に関わっているという作品を作ってみたかったんです。

僕ら自身も音楽から色々な影響を受けていますよね。例えば、嬉しくなったり悲しくなったり、盛り上がったりするので、歌の力はすごいです。それをファンタジーに入れ込んで見たいという思いがありました。そこから壮大な展開にできないかなと作り込んでいきました。

― 「壮大な」と出ましたが、そのイメージやアニメの時代感、雰囲気などはもともと監督自身の中にあったのですか?

僕自身、ゲームが好きでそこから影響されているのもあるかもしれません。例えば『ドラゴンクエスト』などの王道ファンタジーが好きなんです。主人公やキャラクターが冒険する作品にしたかった。自分の知らない世界、こんな世界に行って見たいな、という思いを作品に入れ込みましたね。そういう世界でキャラクターを動かしてみたいな、と。

 

― LOST SONGでは、鈴木このみさん、田村ゆかりさんとダブル主演となっています。

「こんな2人の歌い手がいます。どうですか?」と推薦があったのが、鈴木このみさんと田村ゆかりさんでした。ダブル主演というのはマストというわけではなかったと思うのですが、1人より2人の少女が歌う歌が、物語の展開に影響を与えていく形の方が面白いのではないかと思うようになってきまして。キャラクター同士の関係性が歌に込められると、より面白いのではないかと言う感じですね。リンとフィーニスは2人とも全然違うキャラクターで、それぞれの人生が交差していくところも見所です。

― キャストの方とのコミュニケーションやアドバイスは行っていましたか?

LOST SONGの収録が始まる前に、一度キャストやメインスタッフを全員集めて、顔合わせとセリフの読み合わせをしました。これは驚かれました。実写や舞台の現場だとよくある慣習なのですが、アニメ制作では珍しいそうです。今回はオリジナル作品だという事もあり、僕自身、深く皆さんと作品を作り込んでいきたいという思いがあって、絵とかを見せながらイメージしていただいて、そこで世界観をかなり共有したと思います。朝早くの開催だったので「眠い眠い」言いながら集まってもらったのですが、「あの読み合わせの集まりよかったよね」と皆さんに言っていただけてます(笑)

アフレコに関しては、キャラクターそれぞれのストーリーや
設定をもともとかなり作り込んでいたので、その内容をキャストさんに伝えていきました。「このキャラクターはこういうニュアンスでは言わないです」というように、放たれる言葉ひとつひとつかなり説明しました。「このキャラクターは怒ってるんだけど、ここではこういう言い方をします」みたいな感じですね。
キャストの皆さんは、実力者の方々が多くて、自分の経験則で役をすぐ取り入る力に感動しましたね。

リン役の鈴木このみさんは、「これでいいのだろうか」という不安が本人にあったと思うのですが、バッチリでした。皆さん1話目からすごく良い演技をしてくれていたと思います。

ー 鈴木このみさんは声優初主演ですよね。

そうですね、初々しさはありました。テクニックなどはどうしたって経験で身についていくものですし。鈴木さんは、演技の中で気持ちの出し方などはしっかりしていましたね。なので、役とのマッチはしっかりできています。
僕も「あっ、リンだ!」と、イメージとマッチするくらい鈴木さんが適役だと思っています。

鈴木このみさん自身の歌に対する思いがリンとすごく似ていて、「こうだから歌いたいんだ、こうだから楽しいんだ!」という思いがほとんどリンと同じで、シンクロしている感じです。なので、共感も含めて本人も役には入りやすかったと思います。僕は「感情をこう出すといいよ」くらいのアドバイスだけでしたね。本人がすでにリンと似ているので、特別、手を加えてはいません。初主演ながらもすごくいい演技をしていたと思います。

― 森田と純平さんもアニメーションでは初監督ですが、現場で感じたことはありますか?

僕は実写出身のキャリアで、アニメ「オカルティック・ナイン」にてシリーズ構成や脚本は担当しているのですが、作画現場などは初めて入って「だいぶインドアな仕事だな」と思ったのは率直な感想です。

実写とアニメでは、「表に出る熱さ」と「内なる熱さ」の違いのようなものをすごく感じました。アニメ制作はどちらかというと後者。じっくりじっくりと制作を進めていく、表現していく。そんな雰囲気を感じています。

― アニメ制作の難しさを感じたことを教えてください。

一つは、実写に比べてコントロールしづらい点ですね。実写の場合は、撮影から何まで監督がコントロールしているのですが、
アニメーションは人が絵を描いていくので、例えばフィーニスが恥ずかしがる表情など僕が完璧にコントロールできるわけではないんですよね。
作画の方々が担当して、実際に上がってきたものを中心に進めていくスタイルになります。苦労するところでもあり、面白いところでもある。

上がってきた絵を見て「あ、こういう表情するのか!」など新たな視点を入れてくれることもあって、そこが面白いですね。
スタッフさんに自分のイメージを伝えきれないと、絵を通して言いたいことを伝えきれない部分もあって難しく思うところもありますね。

― LOST SONGでも多くの試行錯誤がありましたか?

そうですね、LOST SONGでも「こういう(作画上の)芝居はさせたくない」のような僕の要望を聞いてもらって何度かリテイクしたり、逆にこういう表現もあるのか、など話し合ったりしました。
アニメーションだと演出の方法によって実写ではできないような表現ができたり、コミカルさが出せたりして。生身の人間ではできないところを表せることができるのはすごく面白いですね。

全てコントロールできるわけではないからこそ色々な方と作り上げていく感覚が強くて、スタッフの方には「良いものを作ってくださった」という感動もありますね。

LOST SONGの背景美術も「こんな美しいものを用意してくださった」と感動しました。LOST SONGでは、劇場アニメ「メアリと魔女の花」などで知られるでほぎゃらりーさんというスタジオにお願いしているのですが、美術監督の大久保錦一さんには、かなり僕の意を汲んで頂いて感謝しています。

― 歌や音響の制作に関してはいかがですか?

今回の作品には、劇中歌が多数登場します。脚本・絵コンテなんかを作っているときに音楽はこんな感じだろうなと頭の中で流れていて、作詞は畑亜貴さん、音楽は白戸佑輔さん(Dream Monster)に参加していただいて、そのイメージを超えるものが上がってきたときに自分の感動が何倍にも膨れ上がりました。そこはきっと見ていただくみなさんにも感じていただけると思っています。「感動が倍増する」感覚です。自分がイメージしていたものよりも少なくとも160倍くらいは感動しています(笑)

―畑亜貴さんや白戸佑輔さんとの制作は、どんな風に進んでいったのですか?

基本的にストーリーやイメージを伝えたりして、音が上がってくるのですが、
「こういうことが言いたかったんですよ!」というのと、「こんな伝え方があるんだ」という2つの感動がありました。
前者は、僕のイメージを再現して、肯定してくれる感じです。自分の感覚を言語化して歌詞に乗せていただいたり、音でシーンに説得力がより入るようになったり。

もう一つは「違う見方を与えてくれている」というもので、
最初、歌詞を読んだときに、自分にも理解できないことがあったのですが、何回か読んでいくと「こういうことだったのか!」「このシーンにバッチリだ!」のように気づきを与えていただいている感覚がありますね。

割と僕は人の意見を聴く派なので、いいものはいいものとして取り入れていく感じです。(笑)

― 原作、脚本、監督まで務められていますが、原作者が監督というのは、制作においてイメージや思いを現場に伝えやすいですか?

それはあるかもしれないですね。ただ、脚本の段階で「この言い回し、このニュアンス」という僕の中のすごく強いこだわりが現場でも最初は伝わりきれない時もあって、「シリアスな場面なのに、なぜここでボケかますんだ」「これ要ります!?」みたいなツッコミをいただくのですが、僕の中ではすごくこだわっているので、しっかり伝える努力はしました。

キャストの方とも距離が近くて、たかはし智秋さんからは「ここでこれ言わせる?!」みたいなことも言われますが、そこが大事なんです!と説明します。(笑)僕が多分、シリアスなところでふざけるようなことが好きなんですよ。舞台も好きで、演出もしたことがあるのですが、舞台も泣きのシーンで何か面白いアクション入れたりみたいな演出をよくします。
泣いてるのにボケたり。お客さんはくすくす笑ってくれるけど、それが余計切ない、という演出があって。そういう雰囲気をアニメに取り入れてみたいという僕の思いもあったと思います。あの独特な感覚は好きですね。

そういった経緯もあって脚本段階から強いイメージを持って、監督として現場に関わっていると伝わりやすいのかなと思っています。

― 監督、アニメ LOST SONGの見どころを教えてください。

この作品のテーマは、僕の中では「誰かのために歌う」ということを意識していて、だれかのために何かをしていくことが、人生の選択になる。そのテーマの表現の一つが歌であって、シナリオの一部でもあるし、物語そのものでもある。

LOST SONGでは他者が鍵ですね。もちろん主人公たちの大いなる目的などありますが、全てのキャラクターがすごく重要ですね。1人も欠かせないです。この間、フィーニス役の田村ゆかりさんに「サブキャラクターにも、こんなにストーリーがあるんだ。それって嬉しいね。」と言われて。キャストの方にそう言っていただけるくらい、それぞれのキャラクターにストーリーがあります。脚本の前の段階でサブキャラクターについてもこういう人生がある、みたいなのはしっかりと作っていっていたので、キャラクターが生きていると思います。本編では、サブキャラクターのストーリーまで詳細に全て描ききれないですが、演じていただく方にも「このキャラクターはこういう境遇でした」のように伝えた上で演技していただいたので、そこも含めて感じていただけると思います。

作品では歌が前面に出ていくと思いますが、歌は独立したものではなく、作品そのものになっています。セリフでもあり、劇伴でもあり、人生でもあり、芝居そのものになっているので、そこは見てくださる方にとっても、あまり経験したことのない感動を持っていただけるのではと思っています。

― 監督がLOST SONGを通して伝えたいことはありますか?

こんなこと言うと格好つけてるんじゃねぇ、と言われそうですが(笑)、僕の人生の意味は「人を楽しませることである」と自分自身で思っています。自分は映像に携わることができているので、映像を通して楽しませたいと言う思いがあります。LOST SONGでは、だれかのために何かを行動しながら成長していくリンとフィーニスを描いているので、見てくださる方が自分自身をキャラクターに重ねることができるだろうし、「だれかのために何かをすることって楽しいぜ!」って伝えたいかもしれないです。

― ありがとうございました!

 

<<森田と純平プロフィール>>
映像演出家。アニメ「LOST SONG」原作・脚本・監督。TVアニメ「オカルティック・ナイン(シリーズ構成)」「信長協奏曲(アニメ)各話監督」「アナザースカイ」「オデッサの階段」など。MAGES.所属。

<<オリジナルTVアニメーション『LOST SONG』>>

【放送情報】
2018年4月7日(土)25:30より TOKYO MX・サンテレビほかにて 放送開始
2018年3月31日よりNetflixにて先行配信

【キャスト】
リン:鈴木このみ
フィーニス:田村ゆかり
アル:久野美咲
ポニー・グッドライト:たかはし智秋
ヘンリー・レオボルト:山下誠一郎
アリュー・ルックス:瀬戸麻沙美
モニカ・ルックス:芹澤優
コルテ/メル:茅野愛衣
バズラ・ベアモルス:小山剛志
ルード・ベルンシュタイン4世:鈴木裕斗
ドクター・ヴァイゼン:小形満
タルジア・ホークレイ:糸博

【OP情報】
オープニング主題歌『歌えばそこに君がいるから』
作詞:鈴木このみ・畑 亜貴
作曲・編曲:白戸佑輔
歌:鈴木このみ

【ED情報】
エンディング主題歌『TEARS ECHO』
作詞 :畑 亜貴
作曲・編曲 :白戸佑輔
歌:フィーニス(cv. 田村ゆかり)

【スタッフ】
原作・監督・脚本:森田と純平(MAGES.)
キャラクター原案:福田知則(MAGES.)
アニメーションファシリテーター:櫻井親良
メインキャラクターデザイン:金子志津枝
サブキャラクターデザイン:原修一・藤澤俊幸
デザインワークス:バーンストーム・デザインラボ
美術監督:大久保錦一
背景美術:でほぎゃらりー
色彩設計:大西峰代
撮影監督:山本弥芳
作詞:畑 亜貴
音楽:白戸佑輔
音楽制作:5pb.Records
制作:LIDENFILMS×ドワンゴ(共同制作)

【公式サイト】
http://lost-song.com/

【公式ツイッター】

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